世界は降りかかるもののすべてである
Die Welt ist alles was der Fall ist.
今回の展覧会名、「世界は降りかかるもののすべてである」という一節は、哲学者のヴィトゲンシュタインの『論理哲学論考』の冒頭に置かれた命題です。一般に流通しているこの著作の英語版では、「世界はケース(事例)であるところのすべてのものである」となっていますが、当初のドイツ語版での文章のニュアンスに従うと、今回の展覧会名となった文章になります。いずれにしても、世界は到来する個別的で、特異な事例の集合であるということをこの一節は示唆しています。
ところで、われわれの制作する作品もまた、それぞれが個別的な事例に他なりません。つまり、個々に偏差と特異性を備えた個別的な事例に他ならないということです。ところが、多くの場合、われわれの思考は様々な枠組みを要請することによって、これらの個別性と向かい合うことを回避しています。国籍、性差、様式、形式、メディウム、その他様々な枠組みに準拠した思考は多くの場合、この個別的な事例の備える特異性は思考されないままにとどまってしまいます。より正確に言えば、個々の作品はこのような枠組みへの抵抗として出現するはずです。
それゆえ、今回の展示では、そのような枠組みを前提とせずに、個別的な事例としての諸作品の遭遇によって生じるかもしれぬ状況の出現において、ひとつの世界が、それがどれほど小さなものであるとしても、出現すると確信しています。その意味で、「必然的に偶然的な」展示を実現したいと考えています。
境澤邦泰
塩原有佳
白井乃衣
堀田千尋
松浦寿夫
三田村光土里
会期:2024年2月12日から2月18日まで(2月13日は休館)
開場時間:10時から17時まで
(2月12日は15時開場、2月18日は16時まで開場)
会場:府中市美術館1階市民ギャラリー
2月12日16時より、沢山遼氏(美術批評家)を交えたギャラリー・トークを予定
No.150/2010-2012年/キャンバス、油彩/170x300cm
境澤 邦泰 Kuniyasu SAKAIZAWA
1972年生、画家。鎌倉画廊(1998,2001,2012,2016) 、Art Trace Gallery(2005,2007,2009)、A-things (2006,2011)、Gallery G-fal (武蔵野美術大学,2012)などで個展。 主なグループ展に「 -edges- 境澤邦泰 堀由樹子」 鎌倉画廊 (2004)、第三回府中ビエンナーレ「美と価値」 府中市美術館 (2006)、「サイボーグの夢」 長沢秀之企画 、Art Trace Gallery (2009)、「組立」 vision’s (2010)、「世界の重さ、最初の手」松浦寿夫企画、なびす画廊 (2013)など。
ソノアイダ#5“Flowers for urban maladies (都市に処方する花束)”展示風景(2022)
photo provided by A-TOM Co., LTD.
塩原 有佳 Yuka SHIOBARA
1985年 茨城県生まれ
2008年 名古屋造形芸術大学造形芸術学部 美術学科 洋画コース 卒業
2007年 短期交換留学 アカデミー・ミネルヴァ (オランダ)
主な展示として
「二人展:塩原有佳、石井佑果」Satoko Oe Contemporary 東京(2022)
VOCA展2022、上野の森美術館、東京(2022)
ART IN TIME&STYLE MIDTOWN vol.19 “INDISTINCT IMAGES”、TIME&STYLE MIDTOWN、東京(2021)
シェル美術賞展2020、新国立美術館、東京(2020)
白井 乃衣 Noe SHIRAI
2000年東京都出身
女子美術大学美術学科洋画専攻を卒業し現在多摩美術大学院美術研究科絵画専攻油画研究領域に在学中。
主なグループ展「midari」高円寺pocke(2022)「open up」Oakclub(2022)など
堀田 千尋 Chihiro HORITA
1990年生。主な個展に「I'm lazy, so you have a crow to pluck with me」(CRISPY EGG
Gallery 神奈川)、「What happened in the vacant lot ?」(スペースくらげ 神奈川)、「Clean the house by using dogs」(ギャラリーHasu no hana東京)。主なグループ展に「アートプロジェクト高崎2021」(高崎)、「3331 ART FAIR 2021」(3331東京)、「雨足に沿って 舵をとる」(アキバタマビ21 東京)など。
「朝の食卓」、2020年、綿布にアクリル、162 × 130 cm (愛知県美術館蔵)
松浦 寿夫 Hisao MATSUURA
1954年東京生。個展としては、なびす画廊(東京)、ガレリア・フィナルテ(名古屋)、ギャラリー21+yo-j(東京)で展示。主なグループ展としては、「第5回ハラ・アニュアル」展(原美術館、1985年)、「視ることのアレゴリー」(セゾン現代美術館、1995年)、「Physicaー自然哲学としての芸術原理」」展(表参道画廊、2018年)、「Heterotopia」展(東京都美術館、2019年)など。共著として『モデルニテ3×3』(思潮社、1998年)、『絵画の準備を!』(朝日出版社、2005年)。
《グリーン・オン・ザ・マウンテン》2023 愛知県美術館
三田村 光土里 Midori MITAMURA
1964年愛知県生まれ 東京在住
フィールドワークから得られる私小説的な追憶を題材に、写真や映像、言葉や日用品等の多様なメディアと組み合わせた空間作品を国内外で発表。文化庁新進芸術家海外派遣 (2005)。 フィンランド三都市巡回個展(2005) 、ウィーン分離派会館 Secessionにて個展 (2006)。あいちトリエンナーレ2016、アッセンブリッジ・ナゴヤ2020、恵比寿映像祭 2022、瀬戸内国際芸術祭 2022。